トレーディングをする方でも、プロップファームという言葉にあまり馴染みのない方も多いかも知れません。もともと欧米を中心に注目されてきたビジネスモデルですが、近年日本でも知名度が上がってきています。ここでは、プロップファームとは何か、広く知られるようになった歴史やきっかけ、報酬システムやメリット・デメリットを解説していきます。
目次
プロップファームとは
プロップトレーダーとは、プロップファームに所属するトレーダーのことで、プロップディーラーともよばれます。広い意味では、金融機関にて自己勘定取引で利益を狙うトレーダーもプロップトレーダーに含まれます。つまり、プロップトレーダーとは、会社の資金を利用して取引を行うことで利益を最大化する職業といえます。
プロップファーム(Proprietary Trading Firm)とは、外部から資金を集めることなく、自社の資金のみを使って金融商品取引を行う専門的な投資会社です。これらの会社は、株式、FX(外国為替)、先物、オプションなどの取引を行い、利益を追求します。プロップファームは、ヘッジファンドとは異なり、個人投資家から運用資金を預かることはなく、あくまで会社の内部資金を運用の対象とします。
プロップファーム内で実際にトレードを行うのは、プロップトレーダーと呼ばれる個人トレーダーたちです。彼らは自己資金を投じるのではなく、会社の資金を利用してトレードを行い、トレード収益の一部を成果報酬として受け取ります。プロップファームは、証券会社のように顧客の注文を仲介するブローカレッジ業務は行わず、自己資金を用いた積極的なトレードを特徴としています。
プロップファームの歴史と注目される背景

プロップファームの起源は1980年代から1990年代にかけて、アメリカのシカゴの先物取引所にさかのぼります。当時、トレーダーたちは他のトレーダーに資金を提供し合い、グループを形成して取引を行っていました。このような形態がプロップファームの初期の姿とされていますが、実際に広く認知されるようになったのは、1990年代後半にコンピュータを用いた電子取引システムが普及してからです。
プロップファームが特に注目を集めるようになったのは、2008年のリーマンショック以降の金融危機が大きな要因です。この危機により、金融機関はコスト削減やリスク回避を目的としてディーリング部門を縮小し、多くのトレーダーが職を失いました。その結果、職を失ったトレーダーたちがプロップファームに移籍したり、自ら新たにプロップファームを立ち上げたりする動きが見られました。
プロップファームは、外部から資金を集めることなく自社の資金のみを用いて取引を行うため、リスクを抑えつつ大口の運用が可能です。また、ヘッジファンドのように顧客から資金を集める必要がないため、運用コストを抑えられるというメリットもあります。このような背景から、プロップファームは金融危機後に急速に注目を集めるようになりました。
プロップファームの仕組み
プロップファームは、トレーダーに自社資金を提供し、彼らが取引を行います。トレーダーは、取引によって得た利益の一部を報酬として受け取ります。また、プロップファームは高度なリスク管理システムを整えており、トレーダーが自由に取引できる環境を提供しますが、ルール違反には厳しい制裁が課されることもあります。
プロップトレーダーの報酬は、取引による利益に基づいて決定されます。一般的には、トレーダーは得た利益の30%から80%を報酬として受け取ることができます。損失が出た場合は、プロップファームがその全額を負担するため、トレーダーは自己資金を危険にさらすことなく取引が可能です。
プロップファームのメリット
プロップファームでトレードするメリット4つを解説します。
大きな資金を運用できる
プロップファームでは会社の資金を使ってトレードを行うため、個人では用意できない大規模な資金を運用できます。これにより、大きな利益を狙うことが可能です。さらに、大きな資金を運用することで、高いレバレッジを使用せずとも十分な取引量を確保できます。これにより、レバレッジに伴うリスクを抑えつつ、利益を得ることが可能になります。
トレードの知識や経験があっても、個人の少ない資金から大きな利益を安定的に稼げるようになるまでには、かなり長い時間が必要になってきます。資金不足の中、大きな利益を得ようとギャンブル的なトレードに走ってしまい、結果的にトレーダーの寿命を縮めてしまうことにもなりかねません。
プロップファームは、トレードのスキルはあるものの資金不足がネックになっているトレーダーにとって、活躍の場を提供する場所としても機能しています。
損失は会社が負担してくれる
プロップファームでのトレードでは、損失が発生した場合、その全額を会社が負担するため、個人トレーダーが自己資金を失うリスクはありません。さらに、プロップファームは厳格な資金管理ルールを設けており、大きな損失を被るリスクも低減されています。
多くの個人トレーダーは一度の大きな損失でトレードを諦めてしまうことがありますが、プロップファームではその損失を会社が負担するため、個人がリスクを背負う必要はありません。
また、プロップファームは徹底したリスクマネジメントを採用しており、トレーダーが危険なポジションを持つことを未然に防いでくれます。このようなリスク管理の手法は、個人でトレードする際にも非常に参考になるでしょう。
他のトレーダーと知識と情報を共有できる
プロップファームに所属することで、他のプロップトレーダーと情報交換や知識の共有ができるという大きなメリットがあります。特にプロップトレーダーとして経験が浅い場合、経験豊富なベテランから貴重なアドバイスを受けられることが成長の機会となります。また、メンタル面でのサポートも受けやすく、トレーディングに関する貴重なアイデアを交わし、競争力のある環境でスキルを磨くことができます。
個人でトレードを行う場合、他のトレーダーと交流する機会は限られますが、プロップファームではネットワーキングが可能で、情報交換やアイデアの共有がトレーディングスキルの向上に寄与します。これらのメリットにより、プロップファームは多くのトレーダーにとって魅力的な選択肢となっています。
運用益の一部を報酬として受け取れる
プロップファームでは、個人で運用するよりもはるかに大きな資金を扱えるため、トレードで得られる収益も大きくなります。その結果、運用益の一部を報酬として受け取るプロップトレーダーは、高額な報酬を得るチャンスが広がります。特に、大きなトレンドを的確に捉えた月には、一般的なサラリーマンの年収を上回る収益を得ることも不可能ではありません。
プロップファームは完全歩合制であるため、トレードの成果が直接報酬に反映される仕組みになっています。このように、プロップファームでは自分のスキルを活かし、大きな収益を狙う機会が多く提供されています。
プロップファームのデメリット
プロップファームでトレードするメリットをご紹介しましたが、デメリットがあることも忘れてはいけません。
完全歩合制なので無収入になるリスクがある
プロップファームでは、報酬システムが完全歩合制であることが一般的です。つまり、トレードで収益を上げられなければ報酬を得ることはできません。そのため、プロップトレーダーとして働くには、継続的に利益を出し続ける能力が求められます。高額な報酬を得られる可能性がある一方で、安定した収入が保証されているわけではなく、結果を求められるプレッシャーといったデメリットも存在します。
厳しい評価とルールに従う必要がある
プロップファームでは、会社の資金を預けられるだけの実力を証明しなければならないため、デモトレードでの実績評価や一定期間の研修を求められることがあります。この間、トレーダーとしての実力が認められていない場合は、リアル口座でのトレードが許されず、その間、無報酬となることも覚悟しなければなりません。
自由度の低さ
プロップファームでは会社の資金を運用するため、定められた取引ルールに従う必要があり、自分勝手な取引はできません。プロップファームごとにトレードや資金管理の詳細なルールが設けられており、それらを厳守することが求められます。これらのルールを守らない場合、リアル口座での運用を一時的に禁止されたり、最悪の場合、契約を打ち切られることもあります。
プロップファームのまとめ
プロップファームは、自社資金を使って金融商品取引を行う投資会社です。そこで働くトレーダーは会社の資金を用いて取引を行い、利益の一部を報酬として受け取ります。プロップトレーダーは、損失が発生してもその負担は会社側が引き受けるため、自己資金を失うリスクはありません。ただし、完全歩合制のため収入が安定しないことや、厳しいリスク管理やルールを遵守する必要がある点を忘れてはいけません。総合的に見ると、他のトレーダーと知識や情報を交換できる機会も多いため、プロップファームはトレードを学ぶための最適な環境であると言えます。